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労働時間削減のための生産性向上1

労働時間削減のための生産性向上(前編)

働き方改革の推進により労働時間削減の圧力は一層強まっていますが、実際にどのように生産性向上を図ればよいのかお困りではないでしょうか。
 
ここでは代表の前職である生産技術の考え方をベースに、業務改善のアプローチについてご紹介します。詳しい解説やコンサルティングをご希望される場合は、お気軽にご相談ください。

生産性の向上とは

計算式を書き換えること

事業活動では、ヒト・モノ・カネ等の経営資源を投じて付加価値を創造し、利益を得ています。利益=売上ー経費であり、1個あたりの売上が大きいほど、経費が少ないおほど利益が上がります。
 
生産性の向上とは、付加価値を生むための経費を削減し、かつ仕事の付加価値を高めていくことで、利益の計算式を書き換えていくことになります。
 

従業員の意識付けも重要

取り組みの前に、働いた時間の多さや、処理した仕事の絶対量だけではなく、いかに効率よく仕事をしたかを重視する考えが必要です。
 
会社の財務や給与が支払われる仕組み等を前提知識として教育しておくことも、協力を得る上で重要となります。
 

なぜ必要?

政府は少子高齢化による就労人口の減少、過労死対策等のために推進しています。企業にとっては事業収益が改善し、労働者にとっても処遇改善につながるなどのメリットがあります。
 
また、付加価値を生むためには人の労働力や地球資源など、限りあるものを消費しています。現代社会は過剰消費・過剰生産の一方で環境破壊や飢餓・貧困が起きているのです。消費するものを必要最小限に抑えて、有意義に利用するということが本質ではないでしょうか。

業務の整理・分析を行う

現状の業務改善を前提として、まずは業務の整理、分析を行います。各担当が普段行っている業務を洗い出しますが、各々の業務について可能な限り以下を明確にしていきます。

  • 目的、目標、納期
  • 計画か計画外か
  • インプットとアウトプット、指示系統など

これらは次のステップで判断材料となるためです。
 
また、各業務を構成する要素を、行動ごとに分類分けして整理します。
例)考える、探す、調査、会議、連絡、報告、移動、確認、入力、記入・・etc
これらも後のステップで改善、機械化等を検討する材料となります。
 
そしてこれらに要している時間や構成割合などを調査します。

業務の取捨選択

関係ない業務は廃止を検討

どんな仕事も目的と目標がありますが、経営組織上の自部門の役割や各期の事業計画に照らして合致していない仕事があれば問題です。やらなくていいことを勝手にやっているのか、やらざるを得ない事情があるのか。
 
事業活動に貢献する行為ならいいですが、特段サービスの向上や利益につながっていない仕事があれば見直し候補です。
 

業務の手段は適切ですか?

目的が明確で必要な仕事であったとして、その目的を達するために現行のやり方は妥当性のあるものでしょうか。その方法、その分担はベストでしょうか。
(後述の標準化の考え方も参照)
 

監督者が把握していない、想定していない業務はないですか?

誰の指示で動いているのかわからない業務はないでしょうか。
他部署からの指示や依頼も、そういう伝達系統が想定されるのであれば、予め実行判断のルール等を決めておくべきです。

業務の標準化と管理

ここからが本題です。
最近は働き方改革に関連して標準化というキーワードが散見されますが、個人的にはその意味するところに違和感を感じています。というのは
 
一般的イメージとして

  • 標準的な遂行方法を定型化してマニュアルにする
  • だれがやっても同じことができるようにする

という意味で用いられているからです。
 
しかし、ここでいう「標準化」はもっと厳密な意味を持ち、目的や活用範囲が異なるのです。以下順を追って解説します。
 

SQCDの明確化

仕事の目的を達成するための条件設定となります。

S:安全

法令で義務付けられた措置を構ずることは当然のこと、作業や環境の特性に応じた安全・衛生対策がなされるべきです。「危険が伴う作業」は存在しても、「不安全な作業」はあり得ないのです。

Q:品質

要求される品質次第で仕事のやり方そのものが変わります。特にオーバースペックは禁物です。適切に設定しないと、余計なコストや仕事が発生します。

C:コスト

目標原価や予算が決まっている場合もあれば、そうでない場合もあります。いずれにしても、SQDを満たすための最も経済的で合理的な達成方法を考える、という考えが基本となります。(ただ安ければよいではない)

D:納期(能力)

納期も遂行方法を左右します。要員配置、機械化、アウトソーシングの検討が必要な場合もあります。業務量と納期に合せた対応(方法を選択する基準等)を決めておくことも重要です。

業務遂行プロセスにおいて、労働災害やロスコストは自社の損失となりますが、品質不具合や納期の遅れは、直接お客様に不利益が発生します。場合によってはサービスの価値がなくなってしまったり、お客様のもとで二次不具合が発生してしまうおそれもあります。
 
これらの条件を満たして、目的・目標を達するには、どのように仕事(生産)をすればよいか検討します。それが標準化のスタートとなります。
 

5M1Iをベースにしてルール化する

業務の遂行方法を決定したら、5M1Iの要素で定義付けます。

標準作業の要素
人 Man

この業務に携われる人間はだれか、求められるスキル・習熟度は?(必要な資格、職能ランク、社内認定資格等)

物 Machine

業務遂行に使用するツールはなにか(道具、機械その他のツール、場合によっては場所等も含む)

材料 Material

必要な資材は何か、消耗品は何か

方法 Method

手順、物や材料の扱い方、判断の仕方(何を、何に、何を使って、どうする、どうなればOK?)

測定 Measurement

出来栄え・品質、作業完了の確認方法、頻度、不具合の対処

情報 Information

業務遂行に必要な情報はなにか、なにを参照するのか、どんな情報を記録するのか

物や材料には具体的な型番、数量も必要です。
機械であれば使用条件、設定値、点検方法も指定します。
 
これにより定められた遂行方法を標準作業と呼び、標準に従って遂行した場合に通常かかる時間を標準時間(ST)と呼びます。STをベースに業務配分や要員配置の計画を立てたり、効率の評価を行うことができます。
 

標準の意味と活用方法

標準に従って業務を遂行することが絶対ルールとなるわけですが、それはSQCDを満たすための基準であるからです。
 
また、標準は様々な管理を定量的に行うための基準としても活用されます。

  • 品質管理
  • 異常の把握
  • リスク分析
  • 事業継続
  • 効率改善

管理においては、正常状態よりもいかに異常状態を想定し備えられるかが重要なります。標準化とは、正常状態を定めておくことだけが目的ではなく、異常が何かを明らかにして管理に役立てることも大きな目的なのです。

リスク分析と事業継続の備え

故障モードと影響度分析

標準作業を構成する要素について、基準違反が発生することが「異常」であり、異常が発生した場合にはSQCDに支障をきたすことになります。

プロセスの各過程ごとに、想定される異常(故障モード)について、発生原因、その場・社内・社外におけるSQCDへの影響発生頻度検出可能性等を評価(影響度分析)します。
 
これによりリスクの見積を行い、対策の要否を判断します。そして標準作業へフィードバックして対策を反映したり、異常発生時の対応策を決めておきます。

影響度分析


運用段階では、実際に発生した異常を記録するとともに、想定外の異常が発生した際にはその都度、分析を行い対策を講じます。同様のケースに対して横展開することも大切です。
 

事業継続の備え

事業活動を維持するための体制構築も行います。

  • 消耗品の交換頻度、交換方法、予備の数量、手配方法
  • 購入資材が廃版又は入手困難になったときの代替方法
  • 道具や機械の点検、整備頻度、方法

 
対応に要する時間、要員、予算等を確保しておくほか、システマチックに機能するよう標準化しておくことが望ましいです。これを計算に入れないと想定外の残業の原因となります。
 
こうした付帯的な事項は見落としがち、あるいは後回しになりがちですが、むしろSQCDを維持するためにはこちらの体制づくりの方が大切なのです。

前編のまとめ

業務の整理と分析

  • 不要な仕事を改善しても意味がない→不要な仕事は廃止
  • 問題点があればプロセスやルールの見直しを行う
  • 要素別に整理することが改善、機械化につながる

 

標準化

標準化とはSQCDを満たす基準を定めることであり

  • 標準的な遂行方法ではなく絶対的な遂行方法
  • だれがやってもではなく人も含めた遂行ルール
  • 標準作業だけでなく、標準作業を維持・運用するための管理体制も含む

 
この発想がなければ、正常状態の合理化に止まり改善の片翼が抜け落ちたり、教育制度やリスク対策と連動した管理につながりません。

標準化イメージ
 

 


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